父の在庫についての発言に疑問を持たなかった無知な頃
父はずーっと繊維の世界で生きて来た人です。
島原から大阪に出て来て船場で丁稚奉公。
その後独立して紳士服を作って販売するいわゆる製造直売を始めました。
だいぶ羽振りが良かった頃も落ちぶれた(失礼)時も全部、娘として見て来ました。
羽振りが良かった頃の思い出をいくつか挙げておきます
家で正月に大ばくち大会が開かれた
お正月、従業員のお兄ちゃん達が我が家に集まり大宴会が開かれていました。そこで花札大会も開かれていてお札が飛び交っていたのを覚えています。
1万円札だったのか千円札だったのかはたまた当時あった五百円札だったのかは覚えていません。
そのお札を小さくたたんで正方形にして何枚も重ねて耳に挟むやり方を父から教わりました。
「こうやって耳に挟んどけばすぐに出せるから便利やで。覚えときや」って
子供に教えるか?普通
その癖が抜けず、良く鉛筆なんかも家で耳にさしてました。便利だもん。
母がそれを嫌って怒られたのを覚えています。
巨大なテディベアをお土産に買って帰ってきた
子供の私の大きさ位のテディベア。
嬉しかった。。。。のか、驚いたのかあんまり覚えていませんが。
ミスタードーナツを店の全種類買って帰ってきた。何度も
お陰で私はミスタードーナツが嫌いになりました。
ミスタードーナツには罪はありません。
その他思い出すとまだまだ沢山ありますが今日の本題では無いのでそれは又の機会に。
1度目の倒産の後。
本当に色々な事がありました。
倒産社長の家族のお話はまたの機会にしますが父はまた会社を作って私はそこで10年位働いていました。(今日はさらっと流しますが本1冊書ける位のお話があります)
再度作った会社もいい時もありましたが、段々状況が悪くなって来ているのも社内に居て感じていました。
毎月の支払いにとても困っていました。あの頃の父のメンタル、強かったのか本当は弱かったのかわかりませんが自分が経営者になってはじめてあの頃の父の気持ちがどうだったのか思いをはせる事が出来るようになりました。
何でも経験しないと分からない事が沢山ありますね。
膨大な在庫を前に父は言った
今日の本題です。
在庫は本当に財産なのか
縫製工場ではありましたが下請けとして決まったものを作るのでは無く、自社企画のものをサンプルを持ってメーカーさんを回り、注文を取って来て作る。と言う方式でした。
しかも生地の手配も全部自社で行っていました。
だからメーカーさんからすれば製品買いな訳です。このデザインは〇〇〇枚発注、みたいな形で注文を受けてました。
父はその発注枚数以上に作ってまた別の所に売ったりしていたのです。
小売店など小ロットで買いたいお店は沢山あります。
でもそのバランスって難しいんです。売れると思って作ったのが売れなかったと言うのは日常茶飯事です。
それの積み重ねが膨大な在庫となり会社の棚に並んでいました。
それを見ながら父が良く言っていたのが
「これ、全部売れたら3千万位するで。だからこれ、財産やで」
私は何だか良くわからず「ふーん」と言う感じで聞いていました。
だけど、今ならわかる。色々分かる。
全部売れたら3千万って、売れなかったからここにあるんでしょ。
3千万の根拠ってひょっとして正規の卸値で計算してるよね。
そんなもん、ファッション品は流行があるんやから値打ちはどんどん下がって行く。
どう考えても正規の値段で売れるわけが無い。
いや、アパレル品なんて簡単に10分の1位に値崩れするよ。
もしかしたら10分の1でも無理かもよ。下手したらタダのゴミよ。
以上、当時は分からなかったから今の私の声です。
案の定、最後まで売れる事はありませんでした。
おい!税務署!
決算書を作る時に製品在庫や仕掛品を計上する欄があります。
それはなぜか全て『資産』扱いなのです。
全然売れて無くてお金も無くて四苦八苦してても膨大な在庫があれば、資産計上となり決算上は利益となり、税金の対象となります。
大きな声では言えないけれど、小さな声では聞こえません。
だから大きな声で言います。
「それって、おかしいやないかい!」
父の言ってた在庫が財産。違う、違う、絶対違うと思うぞ。と言うお話でした。